多発性骨髄腫と骨病変

多発性骨髄腫の患者さんの生命予後に影響を及ぼすと報告されている要素1)には表1の項目があり、骨病変も挙がっています。多発性骨髄腫のさまざまな症状の中で、約70%の患者さんが診断時に骨病変を有することが知られています2)。特に脊椎の圧迫骨折は患者さんの生活の質を低下させ、化学療法を受けられなくなる、合併症のリスクや入院期間の延長の原因となりえます。さらに、骨の痛みによる長期臥床は誤嚥性肺炎・褥瘡(床ずれ)などの合併症をきたし高い死亡率を引き起こす可能性があります。多発性骨髄腫に伴う病的骨折については、抗がん剤による化学療法、放射線療法といった現病の治療、医療用麻薬などの鎮痛薬の投与、安静臥床やコルセットの着用などの保存的加療が行われてきました。しかし、これらの治療による除痛には時間がかかり多発性骨髄腫の治療の時期を逸することも時にありました。最近では(2011年から)多発性骨髄腫または転移性骨腫瘍による有痛性脊椎圧迫骨折に対しても、椎体形成術の1つであるバルーンカイフォプラスティ治療(BKP)が適用できるようになり、公的保険も適用されています。

1),2) J Clin Oncol 23:9219-9226

表1

General character 年齢(>65歳)、PS不良、血清アルブミン値
腫瘍量・活動性 骨髄形質細胞割合、β2-microglobulin、CRP値
血液学的因子 貧血、血小板数、好中球数、リンパ球数
骨病変 高Ca血症、骨痛、溶骨性病変、圧迫骨折
腎不全 血清クレアチニン値、血清尿素窒素値
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