せぼねの骨折を治療しているドクターの独り言

VOL1. 美しいせぼねを保つために・・・

近畿大学奈良病院 整形外科・リウマチ科
教授 戸川大輔

『骨折をしたら、骨を元の形に戻して固定をする』。これが骨折治療の基本です。手首や足首の骨折、大腿骨の骨折なども、決して曲がったまま骨折をつけたりはしませんよね。でも、せぼねの骨折は違うんです。手首や足首の骨折のように、ギプスを巻いたり、すぐに手術をしたりはしないことが多いので、かねてから、ある程度の変形は許容して治療をするのが一般的なため、治療を終えてもせなかが丸くなってしまうことがあります。でも、せぼねを骨折した患者さんたちを診ていて、『これでいいのだろうか?』という疑問を感じています。
せぼねの骨折にはいくつかの特徴があります。まず、多くは骨粗しょう症が原因で起こる脆弱性骨折(軽微な外傷で骨折する)です。転んだり、尻餅をつかなくても骨粗しょう症が進んでいると、せぼねは簡単に骨折します。また痛みがでる場所が骨折の部位から離れていることもあります。またせぼねは24個ありますので、1枚のレントゲン写真では、どの骨がいつ骨折したのかが分かりにくいこともあります。放っておくと、いつまでも骨がつかなかったり、近くの神経に当たって下肢の麻痺がでたりすることもあります。
せぼねの骨折の診断ではMRI検査が役立ちます。いち早く診断して、より良い形で固定して変形を作らないことがせぼねの健康につながります。最近は、痛みが少なく、傷の小さい手術もできるようになってきています。他の骨折のように、せぼねの骨折も、少しでも形良く治す時代にしなくてはいけませんね。


 

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