Drインタビュー(脊椎圧迫骨折の治療法BKPについて)

奥田晃章先生 奥田整形外科皮膚科医院 院長

脊椎圧迫骨折が患者様に及ぼす影響及び治療の重要性

脊椎圧迫骨折を生じると強い腰痛を感じるだけでなく、痛みのために身動きがとれなくなることもあります。多くの場合はコルセット、消炎鎮痛剤、骨粗鬆症薬、運動療法などの保存治療で骨がつき、腰痛も徐々に軽減します。しかし時には骨がなかなかつかず強い腰の痛みが長引くことがあります。
近年人口の高齢化に伴い独居世帯の増加や老々介護といった問題がクローズアップされていますが、このように骨折によって強い腰痛が続くと立ったり座ったり歩いたりといった基本的な動作が難しくなり、自立した日常生活を送ることが困難になります。延いては寝たきりに伴う認知症の進行や肺炎など全身状態の悪化などをきたしてしまうこともあります。
このような状態になることを防ぐためには、できるだけ早くに痛みをとり動きやすくしてあげることが重要と考えます。低侵襲な手術法としてバルーンカイフォプラスティ(BKP)治療が保険適応となりましたが、この治療法はそのための一助となり得ると考えます。実際に、腰痛のために身動きが困難になった脊椎圧迫骨折の患者さんにBKPを行うと、ほとんどの方が術直後から腰痛が楽になり移動もスムーズになっています。その結果、長い間ベッドで安静にすることによる様々な病気を防ぐだけでなく日常生活を自立して行なう事や生活の質(QOL)の向上にも繋がっています。

病診連携を行われているかかりつけ医のお立場から

骨粗鬆症を伴った高齢者において脊椎圧迫骨折は転倒や重い物を持つなどのちょっとしたきっかけにより生じることが多く、初診時のX線撮影で骨折がはっきりしない症例も少なくありません。そのため骨折が見逃され診断が遅れることも多々ありますので、1週間以上続く原因不明の腰痛があればMRIを撮影できる施設か脊椎専門医への受診が望ましいと考えます。また保存治療を3-4週間受けても体を動かす時(起き上がる時など)の強い痛みが続く場合にはBKP治療もできる脊椎手術施設への受診をお薦めします。
一方でBKP治療を受けて良くなった後に新たな骨折が発生することについて懸念する声もありますが、自然に発生する率を考えると決して多くないと思われます。このような骨折を予防するためには、BKP術後の患者さんに対して、病診連携の一環として骨粗鬆症の薬物治療、転倒防止や骨量増加を目的とした運動療法を行うことが重要と考えます。

BKP治療を受けられた患者様の例と治療の選択について

一人暮らしをしていた78歳女性のAさんは尻もちをついて腰が痛くなり、身動きがとれなくなったため救急車で搬送され入院となりました。X線撮影で脊椎圧迫骨折が認められたためコルセットや薬物治療が行われましたが、骨折から1ヵ月が経過しても寝返りや歩行などに伴う強い腰痛が残っていました。そこでBKP手術の有効性を説明し脊椎手術施設へ紹介することになりました。BKP治療を受けたところ手術翌日には腰痛が軽減し楽に動けるようになり、術後1週で退院されました。
Aさんの場合はBKP治療が有効に作用しましたが、BKP治療を受けられる方全員が同じような効果を得られるとは限りません。骨折や患者様の状態によってはBKP治療を受けられない場合もありますし、BKP治療を受けることによるリスクもありますので、医師とよく相談して理解したうえで最適な治療を選択されることが重要と考えます。

患者様・ご家族の皆様へ

ここ数年で骨粗鬆症の薬物治療、手術治療(BKP)など骨粗鬆症に伴う脊椎圧迫骨折に関する治療法は進歩し選択肢の幅も拡がっています。高齢者のご家族が尻もちをつくなどちょっとしたきっかけで身動きのとれない腰の痛みをきたした場合には骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折が疑われますので、まずはお近くの脊椎専門医にご相談ください。

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