せぼねの骨折を治療しているドクターの独り言

VOL2. せぼねの手術を受けるかどうか・・・

近畿大学奈良病院 整形外科・リウマチ科
教授 戸川大輔

手術は怖いので受けたくないという患者様の気持ちはよくわかります。以前は、患者様やご家族が『脊椎の手術を受けたら麻痺になったり、車いすになったりすると聞きます』とおっしゃられるのをよく耳にしました。もちろん病気の種類や重篤度にもよりますが、手術前には歩けていたのに、手術後に歩けなくなるということはそれほど頻繁には起こりません。また、手術を考えている患者様から『手術をしたら絶対に良くなりますか?』と聞かれた場合、脊椎外科医は内心で『絶対良くなるから手術をしましょう』とお答えしたいのですが、脊椎外科医として『絶対に良くなります』とお答えすることは、正直に言うと難しいことなんです。手術治療にはどんなに避けようと思っても避けることができない合併症リスクが少なからず存在するからです。ですから私は患者様に、合併症が起こらないように努力しますし、それで合併症が起こったとしても一生懸命治療しますとお話ししています。

脊椎外科医は、学会に参加したり、論文を読んだり、手術研修を行ったりしながら多くのことを学び日々研鑽を積んでいます。長年、脊椎手術に関わっていれば様々な手術合併症を経験することもありますし、患者様につらい思いをさせる経験もあります。そういった経験を持ちながらでも脊椎外科医が手術治療を患者様に勧める場合には、このまま手術をしないで経過を見るよりも、手術をしたほうが治りが良いという判断をしているからなのです。さらに最近は手術の方法も多様になり、発展しています。傷も小さく、有効な脊椎手術ができるようになり、脊椎外科医も全体的に経験値が上がっています。

近年は様々な医療情報がテレビやインターネットからも得られるので、患者様やご家族もよく勉強されているように感じます。また、症状が良くなるなら手術を希望するという患者様も増えているように思います。手術を受けると決めるポイントは、診てもらった脊椎外科医の先生からの説明に十分に納得がいくかどうかでしょう。先生との相性も重要なポイントだと思います。

せぼねの病気で寝たきりになったり、痛みに苦しむ患者さんが少しでも減るような手術治療が施せるようになるために、脊椎外科医の仲間と一緒に、更に研鑽を積んでいきたいと考えています。

 

ページの先頭へ